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「棋譜利用に関するお願い」について・論点&当ブログの見解

2020年1月7日

2019年9月13日付で、将棋連盟公式で「棋譜利用に関するお願い」という告知がされました。

https://www.shogi.or.jp/news/2019/09/post_1824.html

要は、

私的利用の範囲を超えて棋譜(図面を含む)を使用される場合は、事前に下記フォーマットへご連絡を…

とのこと。

なるほど…。王将戦挑戦者決定リーグに向けた、テレビを中心としたマスメディアへの対応だな…

というのが第一感だったが、ネット民の反応を見るにつれ、

いや、これはもしかすると、自分にも関係あることかもしれん…

と思えてきたので、あれこれと思いを巡らせる羽目になりましただ。

当ブログの見解

Youtube動画>>YOUTUBERは将棋連盟の財産を損していない!

個人YOUTUBERって将棋連盟の財産を「損」してるの??

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論点整理

読めば読むほど、この告知が「スッキリしない」のは、以下のような論点が存在するからではなかろうか?

「私的利用の範囲」とは?

「私的利用の範囲」とは、自分の家のパソコンに棋譜を取り込んで、棋譜ソフトや将棋ソフトに並べて鑑賞or研究…あたりの範囲(までは問題にならない)という意味と思われるが、別の解釈もありそう。

「棋譜の使用」とは?

もっと分かりにくいのは「棋譜の使用」の意味。

果たして、「棋譜の使用」とは、どこまでを言うのか?

棋譜(図面を含む)」とあるが、一局の将棋のうちの一部の局面や一部の手順も「棋譜の使用」にあたるのか?

ネット空間で将棋についての情報や意見を発信する場合、プロの将棋の局面や手順を抜きにすると、かなり窮屈になる。

・ネット空間で語る=私的範囲を超える

・プロの将棋の一局面や手順を使用=棋譜の使用にあたる

と解釈すると、将棋に関して情報(意見)発信できる範囲は著しく限定される。

これを貫いた場合、「インターネットが世の中に普及する以前の状態」=「将棋ファンはもっぱら情報の受け手の状態」に一気に近づくことにもなりかねないが、将棋連盟や主催者は、それを理想の姿と考えているのか?

※この場合、将棋ファンが自由に情報発信できるのは、せいぜい、「すご~い!」「やった~!」「残念…」のような感情表現か、自分が指した将棋を基にした研究発表程度のものになる。

さらに言えば、将棋連盟や主催者は、「両者の財産」が最大化する状態とは、このような、閉鎖的な情報空間の下にこそあると考えているのか(多分、そうではないだろうが…)?

Youtube動画>>YOUTUBERは将棋連盟の財産を損していない!

主催者は横並び?

公益社団法人日本将棋連盟各社が主催する棋戦で作られる棋譜は両者の共通の財産であり、棋譜の無断使用は両者の財産を損なう恐れがあります」…

…とあるが、棋戦によって、棋譜(および対局内容)の公開・非公開の態様は異なっていて、すべての棋戦において、「ダメ or OK」の基準が同じということもないのではと思われるところ。

そういった点も全く明らかにしないままに、ただ「事前に下記フォーマットへご連絡を…」とあるのみ。

届け出制か許可制か?

事前に下記フォーマットへご連絡を…」とあるのみなので、「届け出れば原則OK」の意味なのか、それとも、「許可が下りなければダメ」の意味なのか不明。

※そもそもこれ、個人情報保護法に抵触してない?

「棋譜利用に関するお願い」が個人情報保護法に抵触する可能性

両者の財産を損なう恐れ」

「事前の連絡」を求める理由が、「無断使用は両者の財産を損なう恐れ」があるから…というもの。

※無断か否かで、財産の客観的状況が変わるとするのは変な言い分。

この損なう恐れのある「両者の財産」とは何なのか?

将棋連盟および主催者が棋譜を利用して利益を得る権利」、いわば「放映権」のようなものということか?

※なお、棋譜自体の著作権はないとするのが通説。

<これって、財産が増えるの? 減るの?>

例えば、将棋ファンの一人が、放送済みのNHK杯の棋譜をソフト解析して発表すると、NHKや将棋連盟の財産は、もっぱら損なわれる方向に作用するのか?

abemaTVで放送された対局を、アマ強豪や元奨励会員らが動画等で解説していなかったら、今頃、abemaTVで対局を見たり、将棋連盟携帯アプリを利用する将棋ファンはもっと増えていたのか?

※今後、これらの情報発信を禁止した場合、将棋連盟や主催者の「財産」は、さらに増えるのか?

当ブログの見解

参考:個人YOUTUBERって将棋連盟の財産を「損」してるの??

…とまあ、他人事みたいに言ってきたが、当ブログ(およびYOUTUBEアカウント)も弱小とはいえ、情報発信媒体のひとつ。

これまで、棋譜に付加価値をつけた情報も発信してきたので、「棋譜利用」させてもらった立場ではある。

(その一方で、毎度毎度、中継情報を事前に予告し、当日は、中継元サイトのリンクを貼るなど、中継サイト等の宣伝も微力ながらしてきた。)

そして、特に、罪悪感を感じることもなかったのは、棋譜DBというよく知られたウェブサイトが、長いこと公然と存在してきた状況下では、棋譜は「みんなの共有財産」としてのコンセンサスが得られているものと考えていたから…というのが一番大きいか。

…と言い訳をした上で…

棋譜の特殊性

Youtube動画>>YOUTUBERは将棋連盟の財産を損していない!

スポーツの中継と将棋の中継の一番の違いは、主たる部分が、プレイヤーの動きにあるのか、プレイの記録や解説にあるのかの違いといえるかもしれない。

「棋譜は野球で言えばスコアブックのようなもの」と言うとき、「だから棋譜の利用はオープンに」という結論になりやすいが、将棋の中継の場合、スコアブックたる棋譜(及び解説)が主たる部分ということもできそうだ。

だとすると、「棋譜利用権」を主張している(と思われる)主催者側の見解には、十分に正当性があり、棋譜の流通は制限されてしかるべきようにも思える。

ただ…

放映権と棋譜利用権

「棋譜利用権」を「放映権のようなもの」と捉えた場合、果たして、そこまで強い排他性・独占性が認められるべきものなのか?

イメージ的には、放映権は、同業他社と争って獲得するもの。そして、放送終了後、視聴者がそれをコピーして、音声を変えてSNS投稿などした場合、著作権侵害が問題になるのが一般的

一方、「棋譜利用権」のようなものがあったとして、それは、歴史沿革的に、同業他社に対して排他的な権利を有しているのであって、vs.将棋ファン(の中の情報発信者)という構図は想定していなかったはず。

それが今、これまでは情報の受け手一辺倒だった将棋ファンが、情報発信主体となりうる地位を得て、二次情報として、棋譜に独自の価値を付加して発信するようになったということ。

解説のウェイトが大きい棋譜

では、実態として、棋譜にスポーツ映像と同様のウェイトがあるといえるのか?

具体的には、「解説なし」スポーツ映像と、「解説なし」棋譜を比べた場合、果たして、「同じようなもの」と言えるのか?

この点、(棋譜の著作権を論じるまでもなく)棋譜単独では、そこまでのウェイトはないと思われる。

例えば、スポーツ中継における映像と解説の重要性の比率が9:1だとしたら、棋譜と解説のそれは、5:5くらいではなかろうか?

つまり、棋譜は、

1)さまざまな層の人の手にかけられるべき性質のもの。

2)独占させることに馴染まないもの。

3)他者との差別化が図りやすく、差別化がされている限り、互いの侵害の態様も薄いもの。

Youtube動画>>YOUTUBERは将棋連盟の財産を損していない!~「棋譜はピザの生地のようなものもの」

実際問題として…

現状、主催者側が、一次情報として棋譜を利用・配信する権利を失ったわけではない

さらに言えば、主催者側による一次情報としての発信内容と、受け手たるファンによる二次情報としての発信内容は、通常、全く異質なもので、共存こそすれ、競合するようなものではない

そもそも、主催者側とファン側では、持っているリソースの量が圧倒的に違うので、ファン側の二次情報的創作物が、主催者側の一次情報にかなうはずなどなく、主催者側の「財産を損ねる」程度など、たかが知れているはず。

Youtubeやブログの訪問者は、通常、主催者のコンテンツにも訪れるもの。

Youtube視聴者が増えれば、主催者コンテンツの視聴者は増えることはあっても減ることはない

なので、主催者側が、同業他社に対して排他性を主張することには正当性と合理性があるだろうけど、同じことをファン側の情報発信者に向けることは、少なくとも、経済的合理性の観点からはかなり的外れという気がしてならない。

Youtube動画>>YOUTUBERは将棋連盟の財産を損していない!

さらに言えば、主催者側がファン側の創造的活動を阻害する行為は、社会経済上望ましくないというだけでなく、主催者側の「財産」最大化に対しても逆行するものとしか思えない。

藤井四段の29連勝から2年以上経っても、将棋ブームは下火にならないばかりか、将棋人口は増え続けているという。その理由は何なのか?

その一つに、自由な情報空間があったことを忘れてはいけない。

事前審査ではなく明確な基準を

今回の将棋連盟が出した告知は、明確な基準を何ら示すことなく、事前に個人情報を提出させるもの。

表現行為を規制しようとしている主体が私人なので、判例のいうところの「検閲」にはあたらないのだろうが、どちらにしても、萎縮効果をもたらすような事前審査を、主催者側がファン側に対して行うなどもってのほか

このような告知は即刻撤回し、「これだけはどうしても困る」というものを限定列挙するにとどめるべき

※事前の審査は、同業他社との間だけでやってくれ。

そんなにカネカネ言うんなら…

最後に…

将棋連盟にカネを払ったのはオレだ。オレ以外の奴が、棋譜を自由に使えるのは、それがいつ、誰であっても許せない!

という主催者ばかりなら、将棋連盟もそろそろ、将棋ファン一般から零細スポンサーを募ることを考えるべき時に来ているかもしれない。

2019年時点で、将棋人口は700~800万人になったと言われている。

少なめに見積もって500万人だとしても、1人100円ずつの出資で、5億円。

1つ2つの棋戦が立ち上げられるところまで来ているはず。

こういう形なら、「スポンサーの利益」と「公益性」が相反することもないだろうしね…

将棋連盟も、そろそろファンから出資募ったら?

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