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「棋譜利用に関するお願い」が個人情報保護法に抵触する可能性

2020年1月7日

2019年9月13日に日本将棋連盟がホームページ上で告知した「棋譜利用に関するお願い(https://bit.ly/2m8fAOH)」。

こんなことをしても誰も得しない」の典型例としか思えないが、世の中、そう思わない人もいるみたいだから仕方ないといったところか…

…と、

それとは別に、この「棋譜利用に関するお願い」における個人情報の取得方法とその後の取り扱いが、(事実なら)個人情報保護法に抵触するのでは? …と思われる点について。

※2019年9月22日現在の状況

利用目的の特定

個人情報保護法は、業者(非営利法人含む)は、個人情報を取得するにあたり、個人情報の利用目的を特定し、その利用目的を本人が知りうる状態に置かなければならない、としている。

個人情報の保護に関する法律

(利用目的の特定)

第15条1項 個人情報取扱事業者は、個人情報を取り扱うに当たっては、その利用の目的をできる限り特定しなければならない

(取得に際しての利用目的の通知等)

第18条1項 個人情報取扱事業者は、個人情報を取得した場合は、あらかじめその利用目的を公表している場合を除き、速やかに、その利用目的を、本人に通知し、又は公表しなければならない

※なお、日本将棋連盟が、「個人情報取扱事業者」にあたらない可能性は極めて低いと思われる。

ところが…

今回の「棋譜利用に関するお願い」では、そのような手続きを踏まずに個人情報を取得し、利用している可能性がある。

棋譜利用に関するお問い合わせフォーム

これを見る限り、個人情報の具体的な利用目的について、何らの明示もない。それゆえ、何のために個人情報を取得したのかも不明

個人情報取得のプロセスからして、明示がなくても利用目的が分かるケースにもあたらない。

また、匿名コンテンツの事前審査(←これ自体も問題と思われる:後述)をするのに、住所・氏名等を取得しなければならない必然性はどこにもない

※「なりすまし」を除外するためには、媒体内でやりとりすることが必要にして十分であって、住所・氏名・電話番号を取得する必要性はゼロ。

本人に無断で、個人情報を第三者に提供していた可能性も

そもそも…

個人情報取得のプロセスが違法では?

今回の「棋譜利用に関するお願い」。

棋譜の無断使用は両者(主催者)の財産を損なう恐れ」があるとしているが…

「財産を損なう恐れ」がある行為とは「無断使用である」と言われても、にわかには理解しがたい論理。

※無断か否かで、「財産」の客観的状況が変わるわけではないのだから。

そして、

「私的利用の範囲を超えて棋譜(図面を含む)を使用される場合は、事前に下記フォーマットへご連絡をお願いいたします」

として、氏名や住所など個人情報の他、表現行為を行う媒体に関する情報(URLなど)の記入を促している。

棋譜利用に関するお問い合わせフォーム

※直感的には、支離滅裂で悪質という印象。

私人間での事前審査

今回の個人情報取得プロセス。何が一番問題かといえば、

財産を損ねる恐れ」という、法律上何の権利か分からない曖昧な表現をした上、

「私的利用の範囲を超えて棋譜(図面を含む)を使用」する場合は

「○○をご参照ください。ご不明な点についてはお問い合わせを」等ではなく

いきなり

事前に下記フォーマットへご連絡を

として、表現行為の事前審査を行う前提の下、個人情報を提出させているだろう。

私人間とはいえ、権威のある側がない側の表現行為について事前審査をしようとすること自体、違法(不法行為)のにおいを感じさせるわけだが、今回、それを推し進めるために、「無断で棋譜を使用したら訴えるぞ」という雰囲気を出し、心理的に圧迫して個人情報を提出させているとみることができそうだ。

しかも、前述したように、必要のないはずの個人情報を取得し、その利用目的についても不明確な状態に置いたままである。

なんて言ってたら、案の定…

個人情報の第三者提供

個人情報保護法は、業者(非営利法人含む)は、本人の同意を得ないで、個人情報を第三者に提供してはならないと規定している。

(第三者提供の制限)

第23条1項 個人情報取扱事業者は、次に掲げる場合(※法令に基づく場合や本人の承諾を得るのが困難な場合等)を除くほか、あらかじめ本人の同意を得ないで、個人データを第三者に提供してはならない

ところが…

本人の同意を得ずに、個人情報を第三者たる主催企業に提供してしまった可能性がある。

このツイートだけでは、全容が明らかではないが、ごく素直に読めば、将棋連盟が「してはいけないことをしてしまった」と解釈できるだろう。

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