2025 Youtube棋譜利用動画裁判・知財高裁判決∼虚偽申告者を徹底擁護

2025年2月19日、知財高裁で、弊ブログと連携しているYoutubeチャンネルについての裁判の控訴審判決がありました。
1年前、2024年2月26日の一審(東京地裁)において、同チャンネル内の動画は著作権はおろか、削除申請者の営業上の利益も侵害していない旨、削除申請者の株式会社が認めたことで、裁判は「棋譜利用裁判」ではなく、「Youtube虚偽著作権申告裁判」へと変貌しました。
プラットフォーマー(Youtube、X、インスタグラム等)に対する虚偽通報によるアカウント攻撃という、棋譜の権利なるものよりもはるかに普遍的でシリアスな問題だってことが、将棋民には分からないらしいが…
東京地裁は、「Youtubeに動画投稿する自由は法的利益にあらず」との規範を立て、(削除申請者が動画の内容や動画のタイトルを確認しないままに虚偽申告を繰り返しても)それは不法行為(民法709条)にあたらないとした上、不正競争防止法上の損害、つまり、動画が削除されてから復元するまでの、ごくわずかな見積もり逸失広告収益額(※その計算方法も実態とかけ離れたものとしか思えないが)しか認めませんでした。
控訴しておりましたが、知財高裁判決も基本的には同じで、東京地裁判決が維持されるという、にわかには信じがたい判決の連続となりました。
当然、上告します。
以下、知財高裁判決の主要部分を簡単にまとめます。
結論
一審判決維持。損害賠償額は、経済的損害と弁護士費用合わせて18,000円ほど。
精神的損害(慰謝料)は0円。
個人情報開示回避等のための異議申立て費用(弁護士費用)は損害にあらず。
判決概要
・動画配信サービスはYoutube以外にも存在する
・動画投稿者は、グーグルに代金を支払うことなく、むしろ広告収入の分配を受けることができる
・動画投稿者は、著作権侵害に関する申立て制度を含むものとしてYoutubeのシステムを利用している
そうであるなら、削除申請者が削除申請に及んだことにつき過失がある場合、経済的損害以外に法律上保護される利益が違法に侵害されたとは認められない。ごく例外的な場合に不法行為の成立が認められるにすぎない。
例外的な場合とは、
1)著作権侵害がないことを認識しながら、特定の動画投稿者について多数回にわたって著作権侵害を行い、動画の公開を妨げるような場合
2)著作権侵害がないことを明確に認識していなくとも、著作権侵害申告を行う目的やそれに伴う行為の態様等の諸事情に鑑み、著作権侵害を防ぐとの目的を明らかに超えて動画投稿者に著しい精神的苦痛等を与えるような場合
本件の削除申請者は、削除申請根拠を当初の「その他権利」から「著作権」に変更した上、第三者の名称を使用して複数回にわたって削除申告を繰り返したが、「著作権侵害がない」ことを認識したと認めるに足る証拠はなく、これもYoutubeの著作権侵害に関わる制度の範囲内での行動にとどまっていたので、不法行為の成立が認められる場合に該当しない。
異議申立て費用
個人情報を侵襲者に知られたとしても具体的な危険はないので、個人情報を侵襲者に知られるのを避ける目的だったとしても、異議申し立て手続は弁護士に依頼する必要のない手続きゆえ、相当因果関係にある損害ではない。
ほか、異議申し立て手続は簡単な手続きゆえ、弁護士に依頼するほどの手続きではない。
根拠のない申告によって動画が削除された上、削除申請者が削除申請を撤回しない場合、Youtuberは個人情報(住所・氏名)を侵襲者に開示の上、異議申立てする以外にYoutubeシステム上で動画を復元させる方法はない。
個人情報開示を嫌う場合、弁護士等の代理人に異議申立て手続きを依頼することができる旨、Youtubeヘルプに明示してある(Youtubeヘルプ「著作権に関する異議申し立て通知を送信する」)。
また、本来であれば(虚偽申告者でないなら)、削除申請者は異議申し立て手続に対し訴訟を起こすはずで、異議申し立て手続は簡単でも軽い手続きでもない。
虚偽削除申請者のやりたい放題
・動画の内容も動画のタイトルも確認しないままに、「この動画は私の著作権を侵害していない」とさえ思わなければ、ボンボン削除申告して構わない。虚偽申請者の「この動画は私の著作権を侵害していない」との認識は、動画を削除された動画投稿者の側に立証責任がある。
(動画の内容を確認しないでボンボン削除申請してる限り、動画が「著作権を侵害していない」と思うことはないでしょうから、あとは、動画投稿者に暴言を吐くようなことさえしなければ、削除し放題ってことになりますね…)
・それが収益化していないチャンネルの動画や、投稿後時間が経過して再生されていない動画なら、不正競争防止法上の責任すら負う必要なし。つまり、何の法的責任も負わなくて良い。
・虚偽削除申請者には、他人のYoutube動画を削除する権利があり、動画投稿者の住所・氏名を知る権利まである。一方、動画投稿者にはYoutubeに動画投稿する権利はなく、動画投稿者は自身に非がなくても、虚偽申告による動画削除、ひいては、当該チャンネル閉鎖、および、同じグーグルアカウントに紐づいている他の全てのチャンネルの閉鎖を当然に受け入れなければならず、それが嫌なら、無条件でどこの誰だか分からない虚偽削除申請者に住所・氏名を開示して異議申立て手続きすれば良い。
・虚偽削除申請者は、再生回数の少なくなった動画や収益化されていないチャンネルの動画は、内容もタイトルも確認せずに削除し放題。削除された動画を復元し、チャンネル閉鎖を回避しようとする動画投稿者の個人情報も取得し放題。
・それがグーグルが設計したYoutubeの著作権侵害に関わる制度なので、嫌なら、Youtubeで動画投稿するのをやめれば良い。Youtube 以外にも動画投稿サービスは色々あるんだから。そう、どのサービスを利用するかは、動画投稿者自身が自由に決めるのではなくて、虚偽削除申請者の意思につき従っていればよい。
・・・といったところか? 天下のグーグルもナメられたものです。
Youtube 収益化要件
Youtube に動画を投稿すれば、誰でも収益が得られるわけではない。収益が得られるのは、一定の収益化要件を満たしたチャンネルのみである(Youtube で収益を得るには)。
Youtube が自由な表現活動の場であることは、Youtube ポリシーの概要を見れば一目瞭然(ただ、無制限というわけにはいかないので、一定のルールが存在する)。
Youtube の動画投稿が妨害されるということは、一にも二にも表現活動(とそれに付随する精神的満足や精神的安定)が妨害・侵害されるということであって、それは、収益化されているチャンネルとそうでないチャンネルで違いはない。
Youtubeの著作権侵害に関わる制度の範囲「外」
グーグルは、Youtuberによる著作権侵害に対して、当該チャンネルBANおよび同じグーグルアカウントに紐づいているすべてのチャンネルBAN等の厳しい対応をしているが、その裏返しで、Youtube著作権申立ての安易な利用を強く戒めている。
特に、削除申請をするにあたっては「法的合意事項」として、例えば、以下の点について宣誓させている。
・著作権侵害の事実を確信している
・自身が著作権者である(削除申請フォームに「著作権者名」の入力項目があり、「削除通知を送信できるのは、著作権者またはその正式な代理人のみです」と明示している。つまり、他人名義による申請を固く禁じている)。
・虚偽があった場合、偽証罪に問われることを認識している
また、Youtubeの著作権侵害に関わる制度においては、真の著作権者でも、なお、著作物の使用がフェアユース(許容範囲の使用)であれば、著作権申立てシステムの使用が禁止されている。このことは(アメリカの)裁判所の判断でもある旨明示して警告している(YouTube でのフェアユース)。
本件の削除申請者のふるまい(著作権侵害の確認も確証もなし、それどころか、動画の内容も動画のタイトルも確認せず、しかも偽名による手続き)が、Youtube著作権侵害に関わる制度の範囲外なのは明々白々。しかも、それが偽証罪に問われるほどに悪質であることを宣誓した上で手続きに及んでいる以上、不法行為が成立しない余地はないと思われたが…。
Youtube 著作権申立て手続きの詳細
Youtubeの削除申請システムは「ウソ発見器」ではないので、削除申請者が上記の法的合意事項等に嘘をついて手続きした場合でも、嘘がないものとして手続きを進めてしまう。
それでも嘘をついた側は、手続きに則ってシステムを利用していることになるのか???
そんなに嘘ついて他人の動画を削除しまくる奴は立派なのか???
Youtube著作権申立て手続きの詳細については、以下の動画をご参照くだされ。
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