藤井聡太「AI超え」一覧
藤井聡太かAI(将棋ソフト)か?
終盤、AIが藤井七段の劣勢・敗勢を判定している局面から、藤井七段が一気に相手玉を詰ませて(or寄せ切って)勝つとか、AIがネガティブ評価した手が、結果から遡ってみたら勝因だったとか…
「AI超え」の現象が何度も発生。
動画で見る⇒[Youtube]藤井聡太AI超え~って何?から珠玉7事例
「藤井が聞け」から「藤井に聞け」へ
「ファンタジスタ」藤井猛九段
少し前までは、「終盤は藤井が聞け」だったところ…
時代は、「終盤は藤井に聞け」に突入した模様…
2020年「流行語大賞」に「AI超え」がノミネート
2020年のユーキャン流行語大賞に「AI超え」がノミネート。
Abema Times “鬼滅の刃”など30語がノミネート「2020ユーキャン新語・流行語大賞」候補発表
藤井聡太AI超え一覧
以下、藤井聡太AI超えメモ(随時追加)です。
※終盤のAI超えだけではありません。
動画で見る⇒[Youtube]藤井聡太AI超え~って何?から珠玉7事例
2020/6/28
2020年6月28日(日)。第91期ヒューリック杯棋聖戦第2局。渡辺明棋聖・三冠との一戦。
水匠 -386(藤井有利)
白ビール -364(藤井有利)
○※渡辺棋聖と水匠が一致。
○※渡辺棋聖と白ビールが一致。
水匠の読み:△3二金(22)
白ビールの読み:△3二金(22)▲1一角成(66)△4六桂打▲同飛(49)△
将棋ソフトの精度も上がり、なかなか「AI超え」が起こりにくくなっていた2020年夏の出来事。
水匠 -144(互角)
白ビール -106(互角)
△3一銀の一手で、後手・藤井七段はせっかくの優位を手放してしまった(?)
…と思いきや、この後、先手・渡辺棋聖に特に問題があったとは思えないのに、形勢はみるみる後手に傾いていく…
水匠 -382(藤井有利)
白ビール -494(藤井有利)
○※渡辺棋聖と水匠が一致。
○※渡辺棋聖と白ビールが一致。
水匠 -585(藤井優勢)
白ビール -671(藤井優勢)
○※渡辺棋聖と水匠が一致。
○※渡辺棋聖と白ビールが一致。
水匠 -801(藤井優勢)
白ビール -702(藤井優勢)
○※渡辺棋聖と水匠が一致。
○※渡辺棋聖と白ビールが一致。
結果から遡れば、AIがネガティブ評価をしていた58手目の△3一銀でギアが入ったと考えられ、以後、後手が勝つ流れとなった。
2019/3/27
2019年3月27日(水)の第32期竜王戦4組ランキング戦。中田宏樹八段との一戦。
先手形勢:白ビール1516(中田勝勢) ぽんぽこ2415(中田勝勢)
中田八段が大優勢の局面。
ここで藤井七段が、まさかの一手を指す。
先手形勢:白ビール2706(中田勝勢) ぽんぽこ3864(中田必勝)
一見、相手に絶好のパスを出すような手。
白ビールの読み:▲同龍(72)
ぽんぽこの読み:▲同龍(72)
将棋ソフトも揃って▲同龍。
先手形勢:白ビール1094(中田優勢) ぽんぽこ4126(中田必勝)
中田八段も、残り時間がほとんどない中、将棋ソフトと同じ▲同龍を決断。
が、これが敗着となった。
先手形勢:白ビール-Mate:18(藤井勝利確定的) ぽんぽこ-Mate:16(藤井勝利確定的)
これが「次の一手」で以下、即詰み。
将棋ソフトも、ここに来てようやく気付いたようでした…
まで110手で藤井七段の勝ち。
「相手が将棋ソフトでも藤井七段が勝っていた」の典型のような手順でした。
2018/9/17
2018年9月17日(月・祝)の第4期叡王戦七段予選C組準決勝。小林裕士七段との一戦。
最終盤、藤井七段が自玉の詰めろを回避して、6八にいた玉を5七に上がったところ。
先手形勢:Apery-494(小林有利) elmo-2905(小林勝勢)
Aperyの読み:△7八飛成(75)▲3五桂打△同歩(34)▲1三飛成(15)
elmoの読み:△7八飛成(75)
もっとも、
「将棋ソフト推奨の△7八飛成で藤井玉に受けがないことに変わりはなく、
投げるに投げ切れず、ただ手数を延ばしただけ…」
とも思われたのだが…
先手形勢:Apery+Mate:17(藤井勝利確定的) elmo+Mate:17(藤井勝利確定的)
後手・小林七段は、将棋ソフト推奨の△7八飛成。
本来なら、「小林有利」「小林勝勢」を維持しなければ整合しないところだが、将棋ソフトはここで気づき、慌てて「藤井勝利確定的」に修正。
一瞬のキレ
先手形勢:Apery+Mate:16(藤井勝利確定的) elmo+Mate:16(藤井勝利確定的)
まで111手で藤井七段の勝ち。
クリスチャーノ・ロナウドが、隙とはいえない隙をついて相手ゴールを奪う時のような一瞬のキレを見せ、藤井七段が勝利。
振り返ってみれば…
この▲5七玉は、後手玉が3六に逃げてきた変化の時、▲3七銀打で詰ますという「詰めろ逃れの詰めろ」になっていた(藤井vs小林・投了図以下の詰手順)。
いつもは安定して人間より強いApery、elmoが、▲1三飛成直前まで詰み筋に気が付かず、直前の△7八飛車成を第一候補に推していた。
Aperyの読み:△7八飛成(75)▲3五桂打△同歩(34)▲1三飛成(15)
elmoの読み:△7八飛成(75)
先手形勢:Apery+Mate:17(藤井勝利確定的) elmo+Mate:17(藤井勝利確定的)
「パソコン環境が違えば、将棋ソフト(AI)はもっと精度の高い判定をしたはず」といった見方もあるかもしれない。
ただ、現環境下でも、「将棋ソフトは、トータルではいつも人間より優れた判断をしている」のは確かで、「その下でのAIに藤井七段が勝った」ということは少なくとも言えるはず。
2018/6/5
ネットが騒然となった2018年6月5日(火)第31期竜王戦5組ランキング戦決勝・藤井聡太七段 vs 石田直裕五段。
先手形勢:Apery633(石田優勢) elmo1163(石田優勢)
※elmo「疑問手」判定。
先手形勢:Apery460(石田有利) elmo1064(石田優勢)
将棋ソフトApery、elmoが、藤井七段の指し手に「疑問手」を付し、かつ、形勢判断で藤井七段にアゲインストな判定していたが…
ここから、まさかの△7七同飛成が飛び出し…
先手形勢:Apery-20(互角) elmo1118(石田優勢)
※aprey「好手」判定。
あれよ、あれよという間に「藤井勝ち」の流れに…
先手形勢:Apery-1093(藤井優勢) elmo-1590(藤井勝勢)
先手・石田五段の対応がまずかったというのではないので、やはり、将棋ソフト(=AI)がちょとボンヤリしていた…とみるのが正しいだろう。
NHKのインタビューで
この対局の少し後にNHKの桑子真帆インタビューを受けた藤井七段。
「AI超え」について話が及ぶと、藤井七段は、「ある条件の下では、そういうこと(AI超え)も起こりうる」という趣旨の見解を示した。
2018/5/18
2018年5月18日の第31期竜王戦5組ランキング戦準決勝(七段昇段の一番)・藤井聡太六段 vs 船江恒平六段。
既に、藤井優勢の局面ではあったが、藤井六段は、将棋ソフトApery、elmoよりも優れた手で勝利。七段昇段を決めた。
Apery-2733(藤井勝勢) elmo-2837(藤井勝勢)
Aperyの読み:△7二玉(71)▲2六金打△4七角成(36)▲4八歩打△5七
elmoの読み:△7二玉(71)▲7一金打△8三玉(72)▲8一桂成(73)
将棋ソフトApery、elmoとも、いったん詰めろを消す△7二玉を最善手としていたが…
まで藤井六段の勝ち。
まさかの△4八銀! これで即詰み(詰め手順はコチラ)。
「これで詰む」と分かっていれば、アマチュアでも詰ませられる人はたくさんいるかもしれない。
でも、「これで詰む」という直感は、普通の人にはなかなか降りてこないはず。
2018/3/22
注目の「天才対決」となった2018年3月22日、第66期王座戦2次予選決勝・vs糸谷哲郎八段戦。
elmoの読み:▲8五銀打
ボナンザ最善手:▲8五銀打
将棋ソフトelmo、ボナンザ6.0とも▲8五銀を推奨。
ところが、藤井聡太六段の指し手は違った。
▲8五桂を残した▲7五銀。
△8二飛という最強の受けに対し、
将棋ソフトの▲8五銀は「それならば▲9四銀以下、必至をかけますよ」という手だったと思われるが、
藤井聡太の▲7五銀は、「それならば▲8五桂以下詰ませますよ」という手だった。
「これで詰む」と分かっていれば、この順(▲7五銀)を選ぶところかもしれないが、「これで詰む」というインスピレーションはなかなか湧かないもの。
現に、将棋ソフトは「気付いていなかった」。
2017/10/9
2017年10月9日の叡王戦四段戦・準決勝、藤井聡太四段 vs 佐々木大地四段戦。
藤井聡太四段が披露した詰め手順は、対局者の佐々木四段だけでなく、将棋ソフト・ボナンザ6.0、そして、elmoも気付いていなかったことが判明。
以下がその局面。
97手目の形勢判断
図は、佐々木四段が▲6四銀と打った局面。これが敗着。銀を使ってしまったため、自玉に即詰みが生じてしまった。にもかかわらず…
先手形勢:elmo2441(佐々木勝勢) ボナンザ442(佐々木優勢)
elmoの読み:△5八馬(36)▲同玉(68)
ボナンザ最善手:△7六桂打
この瞬間に形勢がひっくり返っていなければいけなかったのだが、将棋ソフトはまだ「気づいていなかった」。
ボナンザ6.0に至っては、△7六桂が「最善手」だったわけで、△5八馬の筋が全く「見えていなかった」。
98手目の形勢判断と推奨手
一手進んだ98手目。
藤井四段は、詰み手順の一手目△5八馬と指した(elmo推奨手も同じ)。
先手形勢:elmo-Mate:16(藤井勝利確定的) ボナンザ-640(藤井優勢)
elmoはここで気がついた。
ボナンザは、半分くらい気づいた?
やはり、藤井四段が見ていた景色を将棋ソフトが共有するのに、ちょっと時間がかかったということなのだろう。
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ディスカッション
コメント一覧
年度名局特別賞を頂けた松尾戦の41銀も追加して良いのでは。
4一銀は「AI超え」には当たりません。客観的にAI超えと言える手だけを集めたページです。
本当にAIの評価値や読みを基にした「AI超え」ですね(感覚的な「これはAI超えだ!」ではなく)。おもしろいです。
詰めろになった状態でも、AIには詰み手順が読めないものなんですね。
長い手数の詰将棋を、詰みがあることを知らないAIに読ませたら、どのくらいの正解率になるか、やってみたことのある人はいないのでしょうかね。興味深いです。
厳密には、特定の局面で延々とソフトを稼働させれば、やがて、「お望みの結果」が導き出されるので、絶対的な意味での「AI超え」はありえないということになるのでしょう。また、即詰みに特化した「脊尾詰」という秀逸なソフトがあって、これだと、多くの場合、数秒で長手数の即詰みも発見します。
石田5段の72銀あるいは64歩が悪いととても思えなく(初級者ですが)、藤井7段が終盤ではソフトを超えている例とせざるを得ないですね。こんな感動するような藤井7段の対局を見るのが楽しいです。
このような7段の読みの例を見て、ソフトの開発者は、7段を目標にして開発するかもしれませんね。
ただ本局の場合、64同銀の時点で77同飛以下の詰みの変化を全部読み切っているとはとても思えなく(詰む変化のいくつかは読まれているでしょうが)、やはり勝負手のような感じではなかったかと初級者には思えます。
私も同じ意見です
エルモ検討しましたが、超えている時ありますね
例とされた3局はいずれも見ていました初級者ですが、この詰みに関して、藤井聡太はソフトより読めていることがよくわかりました。ソフトの読みの深さが使用したPCの能力では藤井聡太に及ばないのですね。すごいことです。
でも大局感や総合的には現状で人間に勝っているように感じます。これはソフトのアルゴリズムによるように思っています。
私が使っているPCは結構ショボイので、ソフトに不利に作用している部分はあるかもしれません。もっとも、このPC環境下でも、Apery、elmoとも尋常でない強さを発揮している実感はあります。そんな中、詰みがある局面での両将棋ソフトの「直感」は、藤井七段の指し手に劣るものだったということは言えるでしょう。