第31期竜王戦 藤井vs増田94手目←「待った」論争に違和感

2018年6月29日(金)第31期竜王戦決勝トーナメント2回戦・藤井聡太七段 vs 増田康宏六段の対局。

94手目、藤井七段が△8九飛 と飛車を打ったシーン。

先手形勢:Apery1384(増田優勢) elmo1451(増田優勢)

2018/6/29藤井vs増田棋譜・一手ずつAI解析

はじめ、△8六桂と指しかけて慌てて引っ込め、一連の所作の中で△8九飛と打った。

この局面では、増田六段が大優勢。

ここまでの増田六段の強気な指し回しに驚きと感動を覚えることこそあれ(藤井vs増田[速報]参照)、それ以外のことに気を留めることもなかったのであるが…

「動画で見たら手が離れている」

「△8六桂と指しかけて慌てて引っ込め、一連の所作の中で△8九飛と打った」

について「待ったではないのか?」との主張をする人がいるそうな。

( ゚д゚)ポカーン

曰く、

動画で確認したら駒(△8六桂)から一瞬指が離れているから『待った』である」

厳格に適用すれば『待った』だから、連盟は何らかの処分をすべきである」

といったもののようであるが…

「指が離れた」か否かは、ビデオ判定しなければ判別できないレベルの事例。単なる「所作上のミスの訂正」と解する余地が十分にあるケース※

指が離れたか否か、ビデオ判定しなければ判別できないものは、「対戦相手がその場で指摘」することが不可能ないし無意味。

<追記 7/3未明>

将棋連盟が、今回の件は「反則にあらず」との見解を発表。

そもそも厳格に審査すべき場面なの?

折りしも、2018FIFAワールドカップでVAR(ビデオアシスタントレフェリー)制度が導入され、ビデオ判定によって厳格な審査が可能になったばかりであった。

このVARは、①ゴール、②PK、②レッドカード、④選手誤認という、「試合を変える4つのケース」についてのみ導入されることになっている。

なので、それ以外のファウルなどについては、全て、主審の判定に従うことになっており、VAR導入によって厳格な審査がなされるのは、特に重大な場面のみということになっている。

要は、「円滑な進行」と「理不尽の防止」のバランスに配慮しているというわけだ。

なので、選手が「ユニフォームを引っ張られた」と主張し、ビデオで見たら実際にそうだったところで、そんなものを逐一ファウル扱いに覆すというものではないし、ましてや、試合後にペナルティを課すことなどあるはずもない。

将棋で「待った」が禁止される趣旨

では、将棋の「待った」が禁止されるのはなぜか?

一言で言えば、「待った」は「理不尽」であり、また、双方にそれを認めるなら、「円滑な進行」が阻害されるからであろう。

線引き

そして、「待った」にあたるか否かの基準として、「駒から手が離れ(別の手を指し)たら」ということになっているようだ。

基準としては特に問題ないと思われるが…

厳格に適用すべきなの?

世の中には、きまりがあると何でも厳格に適用しなければ気が済まない人もいるのかもしれないが、厳格に適用すべき場面とそうでない(or そうすべきでない)場面があることは、大概の人は知っている。

指し手の所作もビデオ判定?

指し手の所作に関する事例で、「ビデオ判定で厳格に審査した結果、連盟は処分を決定した」などとしたら、所作上のミスの訂正を許さない方向に作用することは容易に想像がつく。

所作上のミスを訂正する場合、多くが、「人差し指と中指を使って指したものを、親指を使って引っ込める」ということをするはず。この一連の動きの中で、「一瞬たりとも駒から指が離れない」ことを想定する方が難しい。

よくある所作上のミス

所作上のミスとしてよくあると言われるものに、

「『相手がこう指したらこう指そう』と思っていた手を、現局面で指してしまった」

というものがある。

この種のミスは、なるべく訂正可能な方向に作用させるべきで、それが「本来あるべき結末」に近づけることになる。

ルールは主役にあらず

「本来あるべき結末」に近づけるためにルールは存在する

ところが、ルール自体が「主役」になり、ルールが結末を荒らし始めるようになったら、本末転倒で、もはや、違和感しか残らない。

指し手の所作を厳格審査してそれを処分するなど、もってのほかである。

<当ブログ見解(2018/7/2 12:00)>

・指が離れたか否か、ビデオで確認しなければ判別できないようなケースは、そもそも問題にすべきでない(相手対局者が指摘したところで無意味に帰するゆえ)。

・相手対局者が問題視せず、所作上のミスの訂正と解する余地があるケースも不問に帰すべき。

・数手後に指そうと思っていた手を現局面で指してしまうことはマナーの問題ではなく、瞬時に気付いた場合に、その訂正を許容する方向でルール運用すべき。

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